知られざる台湾の九份の歴史と観光地【某日本人有名歌手の先祖の土地】

日本人にとっての台湾のイメージは、九份ではないでしょうか?

台湾旅行のイメージ写真に九份が必ず載せられています。

友人知人に「台湾行ってきた」と言うと、「あのジブリ映画のモデルになったところね」と言われる人も多いでしょう。

しかし、意外と九份は日本人の想像している観光地とは異なっている場所です。

場所に関して言えば、台北の観光地として紹介されるけど、実際の九份は隣の新北市にあります。

(日本の東京の観光地として、神奈川県の箱根が紹介されるようなものです)

実際に行ってみても、あのジブリ映画のような温泉街ではありません。

おまけに、実はジブリが「台湾の九份は『千と千尋の神隠し』のモデルではないし、宮崎駿監督は台湾に行ったこと自体ない」と公式に発表しています。

ただ、本当の姿の九份も充分に面白いところです。

九份名物と言える美味しい食べ物はあるし、某日本人有名歌手にゆかりのある土地だったりします。

何より九分で撮る写真は、異国情緒あふれてフォトジェニックです。

旅行が終わる頃に、台湾の空港でスマホの写真フォルダを見返せば、台湾旅行の素敵な思い出の写真として九份が残ることでしょう。

九份とは?

日本人だけでなく、外国人観光客から人気の九份。

実は九份、台北市ではなく、台北市をドーナッツ状に囲む新北市の東側にあります。

九份と呼ばれている場所は、正確に言うと「九份老街」と言い、古い街並みが観光地になっている場所です。

歴史のところでも触れますが、九份一帯は温泉街ではなく、金が掘れる金鉱として栄えていました。

そこで働く労働者のための街が九份老街です。

九份の行き方

・バス 片道1時間〜1時間半
・タクシー 片道35〜45分くらい
・電車とバス 片道1時間〜1時間半
・観光バスツアー 往復5時間(九份観光を含む)

九份への行き方は、上記の4つです。

九份は山の斜面に開かれている街なので、電車が通っておらず、基本的にバスとタクシー移動です。

台北駅から電車で行く場合は、最寄りの瑞芳駅まで行き、そこからバスに乗って行きます。

九份に行くのにオススメの方法は、予算と人数によって違います。

・1人で、交通費を出せる 観光バスツアーがオススメ
・2〜4人いて、交通費を出せる タクシーがオススメ
・1人で、交通費を出せない バスがオススメ
・2〜4人いて、交通費を出せない バスがオススメ

台湾旅行は2泊3日が目安だと思うので、時間が限られていることでしょう。

その上、台北の市内から九分までバスで片道1時間〜1時間半かかります。

なので、旅行の予算に余裕がある人(往復の交通費目安 4,000〜6,000円)は、タクシーを使うか、もしくは観光バスツアーで行くことをオススメします。

予算がない人は、バス会社で行くとかなり安く済みますが時間がかかります。

なので、旅行のスケジュールに余裕を持っておくことをオススメしたいです。

詳しい行き方は、リンクを参考にしてみてください。

九份の入場料

九份に入場料はかかりません。街全体が観光地になっているので、訪れる分には無料です。

ただ、九份のお店には営業時間があり、午前中に訪れたり、夜の8時を過ぎると閉まっているお店があります。

特に九份は夜の8時を過ぎると、急にシャッターを下ろすお店が増え始めるので、観光する際の順番に気をつけてください。

実際に九份に24時間いてわかった人の流れはこんな感じです。

7:00〜9:00の時間帯

・7:00〜9:00の時間帯

観光客が来ない静かな時間帯。九份とは思えない静けさで、人のいない九份の景色を撮れます。

お店は全然空いていないので、注意が必要です。

9:00〜16:00の時間帯

・9:00〜16:00の時間帯

徐々に観光客が到着し始めます。特に朝イチは中国人観光客のバスツアーが多いです。

ちらほら人が見られるようになり、日本語、韓国語、中国語のツアーガイドの声が聞こえ始めるのもこの時間帯。

お店はお昼に向けて徐々に開き始めます。

16:00〜19:30の時間帯

・16:00〜19:30の時間帯

九份で人が一番多くなる時間帯がココ。

夕日と夜景の両方を見ることができるので、観光バスツアーが乗り込んでくるピークでもあります。

お店は一番開いていますが、混雑を極めるので、中には入れない場所も出てきます。お店に入る場合は待つことを覚悟で。

19:30〜21:00の時間帯

・19:30〜21:00の時間帯

19時半くらいを境に観光バスツアーのお客さんがはけ始めます。九份も落ち着くので、写真を撮るにはオススメの時間帯です。

個人で行くなら、先に買い物やお茶をして、19時半以降に写真を撮ると楽しく過ごせると感じました。

交通網も少なくなるので、日帰りの人は20時台までに帰ることをオススメします。

21:00〜22:00の時間帯

・21:00〜22:00の時間帯

お店が閉まり、観光客も全然いなくなる時間帯です。

またお店の灯りも消えるので、21時以降に写真を撮っても綺麗な九份の風景を写せない可能性があります。

九分に泊まるなら、お茶屋さんが空いているので、ゆっくりお茶を飲みたいなら隠れ家のような雰囲気を楽しめます。

知られざる九份の歴史

九份は、ジブリの『千と千尋の神隠し』のモデルとして広まりましたが、ここは温泉街ではありません。

本当の九份は、某日本人有名歌手に先祖に縁のある歴史の土地なんです。ここでは一人の台湾人青年の話をなぞり、九份の歴史を紹介します。

今でこそ九份に世界中から観光客が押し寄せていますが、300年ほど前の清朝時代初期の九份は、9世帯ほどしか住んでいませんでした。

モノを買う時にいつも、「9世帯分(九份)」と言ったことから、その名がついたと言われています。昔はただの山の上のさびれた村に過ぎませんでした。

そんな九份とある台湾人の青年の運命が変わったのは、1895年の日本統治時代になってからです。

今までは清国の領土だった台湾。しかし、日清戦争に日本が勝ち、「今度から台湾は日本の領土」と言われます。

多くの台湾人が驚き、ショックを受けたのですが、台北瑞芳地方に住む顔雲年という若者にとってもそれは同じでした。

幼い頃から中国の官僚試験の科挙に受かることが夢だった顔雲年。

しかし、国が日本に変わることで、その夢が絶たれてしまったのです。

さらに彼の不幸は続きます。

顔雲年のおじさんが日本軍に逮捕されてしまったのです。匪賊と言って、暴力的な手段で不法行為をする人だと間違えられました。

しかし顔雲年青年はあきらめませんでした。

自らが出向き、日本軍の隊長と漢字で筆談して、誤解を解いたのです。これが縁になり、日本軍に引き止められ、民間と当局の通訳者になりました。

青年だった顔雲年はこのチャンスを見逃さず、日本語の勉強をします。

さらに顔青年は九份のある瑞芳地区の警察署で働けるまでに出世した頃、彼に幸運が訪れました。

九份では日本の領土になる前から金や石炭が取れたのですが、その採掘が本格化したのです。

静かな寒村だった九份は、ゴールドラッシュに沸きました。1917年のことです。

顔青年は弟と一緒に、金や石炭の採掘を手伝うようになり、会社まで設立するようになりました。

九份は小香港と呼ばれ、働くために人が集まりだします。すると、必要なるのが息抜きの場所です。

仕事を終えた労働者が、お酒を飲んだり、映画を見たりするところが必要になりました。モノを売るところも必要です。

(昔は一番いいものを九份で売り、二番目は台北で売ったという話もあります)

そんな流れで、九份は栄えるようになりました。現在の我々が訪れている九份は、金を掘った労働者が疲れをいやした街なのです。

さて、話を戻しましょう。

その後の顔雲年はどうなったでしょうか?

九份の金や石炭の採掘は、藤田組という日本から来た会社が仕切っていました。

しかし、藤田組の藤田伝助から信用されていた顔雲年は、九份の金と石炭の採掘権を譲ってもらうことになったのです。

これを兄弟で分け合い、兄の顔雲年が金鉱を、弟の顔国年が炭鉱を管理するようになります。

九份のおかげで顔一族の会社は大成功し、なんと台湾五大財閥にまで数えられるまでになりました。

一説によると、五大財閥になった戦前の顔家の敷地は、基隆から台北まであったと言われます。

そして顔雲年から数えて孫にあたる顏惠民は、戦前の日本の早稲田大学を卒業。

戦後は台湾に帰りますが、その後日本に戻って会社を継ぐ経営の勉強をします。その最中、銀座で働いていた女性に声をかけて恋に落ちたのです。

彼女の名は、一青和枝。

2000年代に、『もらい泣き』や『ハナミズキ』で大ヒットを飛ばす歌手の一青窈さんの母親です。

そう。九份とは、歌手の一青窈さんのひいおじいさん一族の土地であり、実は我々はそこを観光しています。それが九份の本当の姿なのです。

長い道のりでしたが、九份に関わる歴史と観光地を紹介しました。

九份の見どころ

九份は目立つ観光名所と言える場所が、九份の階段くらいです。

金鉱で働く労働者のための街だったので、ノスタルジックな風景は素晴らしいのですが、手持ち無沙汰になるのも事実。

実際に行ってみると、九份で何をすればいいかわからない人が多いかもしれません。

ここではオススメのポイントを紹介します。

九份老街の階段

九份の名所と言えば、山の中腹から山頂まで続く階段です。

夜になると、非常に綺麗なライトアップがされており、幻想的な風景が広がります。

提灯やライトで異国情緒豊かな風景を眺めるのも楽しみの一つです。

フォトスポット 海悦楼観景茶坊

九分のあの幻想的な写真はどこで撮られているのでしょうか?

観光のパンフレットと同じ写真を撮ってみたい人は多いでしょう。

しかし、実際に九份に行ってみると、なかなかあの風景は見当たりません。

階段途中の間に広場があるのですが、そこで押し合いになりながら阿妹茶樓というお茶屋さんを撮って、人混みに疲れる人が大半です。

(この記事を書いているぼくも最初はそうでした……。)

実は九分のフォトジェニックな風景は、海悦楼観景茶坊というレストランの3階のテラスから撮られています。

九份で綺麗な景色を撮りたいなら、海悦楼観景茶坊に入ってみてください。

ただ、夕方どきの海悦楼観景茶坊は混み合っているので、入店を断られる可能性があります。もし入るなら早めに入って、夕暮れの時間を待つのがオススメです。

それとお茶の量が多いので、2人で1つの急須をシェアするくらいでちょうどいいくらいです。

九份の名物スイーツ 芋圓

九份にはスイーツの名物もあります。それが芋圓です。

芋圓は里芋を蒸して柔らかくしたモノを潰し、水とサツマイモ(もしくはジャガイモ)の粉を混ぜて、もう一度ゆでて作られます。

台湾全体で作られますが、特に有名なのが九份で作られる芋圓です。

台湾人も九份名物だと思っており、九分の名物なので、ぜひ食べてみてください。

タピオカに似たモチモチとした食感がクセになってしまうスイーツです。

九份の中には有名店が2店舗あります。

個人的なオススメは、九份の階段を上り切ったところにある阿柑姨芋圓です。

店舗の中にある食べられる場所は、九份から眺められる景色を一望できます。

味も景色も楽しめるのでオススメです。

九份のお茶屋さん

九份といえば、台湾茶を飲むのも楽しみのひとつです。

九份にはいくつもお茶を飲めるお茶屋さんがあり、あらかじめどこのお茶屋さんがいいか、入る場所を考えておくと楽しいと思います。

だいたい有名な場所は以下の3つです。

九份茶坊

九份茶坊は100年前から九份にあった茶藝館をリノベーションし、現代に復活させたお茶屋さんです。

九份によく行く人の中ではここが最高だとの呼び声も高く、ぼくも一度お茶をしてそう感じました。

1人でいくと4,000円くらいかかるので、できれば2人以上で行くといいでしょう。

値段が高く、また景色の見晴らしも良くないんですが、出されるお茶と100年前からある茶芸館の雰囲気は最高です。

お茶を飲むなら、ここが一番オススメです。

阿妹茶樓

阿妹茶樓は『千と千尋の神隠し』の湯婆婆の茶屋になったと言われてる茶藝館です。

実際のところは、「それは違うんだけれど……」と口ごもってしまうのですが、値段が無難で、ソツがない場所です。

外から眺めるこの茶藝館の雰囲気が素晴らしいので、中に入ってしまうと景色が悪くなってしまうのがもったいありません。

ただ、接客する方も観光客慣れしてるので、スムーズにお茶を出してくれます。

海悦楼観景茶坊

海悦楼観景茶坊は阿妹茶樓の向かい側にあるお茶屋さん兼レストランです。

お茶は普通のレベルで、お茶を飲むだけなら他の2つのほうがオススメですが、九份の写真を撮りたいなら、ここは隠れた名所。

2階や3階のテラスから眺める景色が最高に綺麗で、プロのカメラマンが撮る九份の写真はここの3階のテラス席で撮られています。

九份の綺麗な写真を撮りたいなら、ぜひ訪れることをオススメしたいです。

九份の関連施設

九份のまわりにはいくつか関連施設があり、合わせて訪れると九份をより楽しめます。

そんな場所をピックアップしてみました。

金瓜石 黄金博物館(新北市立黄金博物館)

九份と合わせてオススメしたいのが、金瓜石 黄金博物館(新北市立黄金博物館)です。

歴史のところでも紹介しましたが、九份は金を掘れる金鉱として発展しました。

九份の老街の中には、かつての九份が金鉱であったことを思い出させるものはあまりありません。

しかし、九份老街からバスで先に10〜15分ほど乗って、金瓜石というバス停で降りると、金瓜石 黄金博物館(新北市立黄金博物館)があります。

ここは九份が金鉱であったことを教えてくれる博物館で、たくさんの展示物があります。

特にオススメなのが、この3つです。

・触れる200キロの本物の金塊

・砂金すくい体験(持ち帰り可能)

・金坑鉱工の弁当

触れる200キロの金塊は世界最大だそうで、フォトジェニックな話題性のある写真を撮ることが可能です。

九份老街と合わせてどうぞ。